改装任務:自分自身との対話を繰り返し気持ちに整理をつけ、駆逐艦「響」の第二次改装を実施せよ!

Q. 響さんがようやく第二次改装可能なLv70に到達したようですが。
A. はい。響を知って84日目、響に出会って65日目。ようやく、です。

Q. ずいぶんとのんびりされていたのでは?
A. この件に関しては謝罪が必要だと考えています。正直なところ、この決断を先延ばしにするために響のレベリングを意図的に遅らせていました。申し訳ない。

Q. 決断を先延ばしに? ゲーム攻略上の観点から考えると、第二次改装は早いに越したことはない。どういうことでしょう。
A. 彼女の場合はちょっとワケが違うので。

Q. 詳しくお願いします。
A. 彼女の第二次改装が他の艦娘と決定的に違うところは、艦名が「Верный(以下、ヴェールヌイ)」へ変わってしまう点です。

Q. ヴェールヌイ。
A. 激戦を生き抜いた響は、終戦後、ソ連に賠償艦として贈られます。そこでヴェールヌイ(信頼)という名を与えられます。

Q. なるほど。いい名前だと思いますが。
A. その通りです。僕もすごくいい名前だと思いますよ。

Q. では、何を悩んでいらっしゃるのでしょうか。
A. 響をヴェールヌイへ改装すること。それはつまり、ものすごく大雑把に言えば、響をひとりぼっちにすることと同義であると、僕は考えてしまうのです。

Q. ひとりぼっち?
A. 響には暁、雷、電という「第六駆逐隊」の仲間がいます。彼女たちは戦争のさなか、響を残して全員が沈んでしまいます。響のヴェールヌイという新たな姿は、そういった物事がすべて終わったあとの姿。あなたは、これをひとりぼっちであると表現せずになんと表現しますか? ヴェールヌイの放置台詞『大丈夫だよ。私は一人でも。』を、単に司令官に放置されても寂しくないよと強がっているだけのものだと解釈できますか? これを見ろ!

Q. 熱くなりすぎです。落ち着いてください。
A. ごめんなさい。でも、そういうことなんです。

Q. あなたの気持ちはわかってきたつもりです。では、響さんは響さんのままで?
A. いいえ。改装します。これは、最初から決めていたことです。

Q. 矛盾が。
A. ご指摘はもっともです。そこに、「艦これ」というゲームがある。「艦娘」という存在がある。艦娘は「改装」という手段をもってさらなる強さを得ることができる。そんな舞台がしっかりと用意されているにも関わらず、改装しないという選択を下すことは、彼女たちというよりそもそもゲームに対して失礼である、というのが僕の中でのもっとも大きな考えなのです。

Q. もう少し詳しく。
A. 要するに、ゲームを楽しみたいいちプレイヤーとして響を改装することは最初から決まっているのです。これは「ゲームを楽しみたい自分」と「響をひとりぼっちにさせたくない自分」との衝突であり、その大きさは前者のほうが勝っていた。もっと言えば、これまで僕が悩んでいたのは、響を改装するか否か、ではなく、響を改装するために必要な体のいい言い訳とはどのようなものか、ということだったんですよ。

Q. なるほど。
A. ただ、心の底の底ではやはり抵抗があるのだということ、これは証明のしようがないことですが、どうかわかってほしい。誤解は受けたくありません。

Q. 少し辛気くさくなってしまいました。ここで軽めのお話を。
A. 難しいこと言うね、あなたは。まあいいでしょう。響がヴェールヌイになったら何が困るって、そりゃあ帽子が暁ちゃんとお揃いじゃなくなっちゃうことですよ。嫌だよ、これは。

Q. あはは(笑) そういう話が聞きたいんですよ。
A. なんか馬鹿にされてるような……。

Q. でもちょっと落ち着いたんじゃないですか? では、これから響さんを改装するにあたっての率直な気持ちを。
A. いつも想像するんです。もしも、響がね、もしもですよ。ある日、執務室で「司令官、第六のみんなを守る力がほしい」と言ってきたら……。そう、このゲームは、史実をベースにしてはいても、史実そのものではない。新たな力を得た響が、いいえ、ヴェールヌイが第六駆逐隊の仲間を守る、そんなifがあったっていい。というかそんなifが見たいのです。

Q. ほう。
A. これまで艦これをプレイしてきて感じたのは、艦娘の台詞に“今度(こそ)は”といったニュアンスの言葉が多いということなんです。彼女たちの気持ちが伝わってくる、強い言葉だと思うのです。じゃあ弱小提督の自分にできることとは? そんなことを思いながら僕は今日も進撃するのです。

Q. ありがとうございました。その情熱は読者の皆さんにもきっと伝わるはずですよ。
A. こちらこそ。明日から時報楽しみだヒャッハー!!!!!

Q. ……。
A. そんな目で見るのはやめて。


~おまけ~


「ヴェールヌイさん、君をなんと呼べばいいかわからない」
司令官の好きに呼べばいいさ」
「……ヴェルさん?」
「まあ、それでも構わないが」
「ヴェル子!」
「好きに呼べばいいとは言ったが、それはちょっとな……」
「ヴェルたそ」
「勘弁してほしい」
「個人的にはやはり“響”からとりたい」
「私は私だよ。どっちでもいいよ」
「ビッキー!」
「いま金剛さんがいなかったかい?」
「……響」
「ん、それがいいさ」
「明日からもよろしく、響」
「こちらこそな、司令官

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